栄光病院トップページ > 栄光通信 > 健康のためのちょっとイイお話し【神様が導いたノーベル賞 〜復活祭とピロリ菌のお話〜】
ヘリコバクター ピロリ菌(以下ピロリ菌)は胃内に生息するらせん状細菌で、1979年オーストラリアのロイヤル・バース病院の病理医ウォーレンにより発見されました。
1874年に既に胃内にらせん状の細菌が生息すると発表されていましたが、『強酸性下の胃内では細菌は生息できないであろう。』という考えが医学会では支配的でした。
ある細菌がある病気の原因であると証明するには、コッホの4原則を満たす必要があります。
コッホの4原則とは、
②その細菌はほかの病気の患者にはみられないこと
③患者から分離した細菌を別人に投与すると同じ病態が現れること
④同じ病気を引き起こした別の個体からも同じ細菌が証明できること、
です。
ウォーレンと共同研究者の研修医マーシャルは、ピロリ菌の分離培養を繰り返しましたが、すべて失敗していました。
しかし、1982年4月14日に幸運が訪れました。それはキリスト教のイースター(復活祭)のために4日間の休暇となり、細菌が5日間培養されたままになったのです。通常の細菌は2日間で増殖するため、それ以上の長期培養を行っていなかったのですが、実はピロリ菌の培養には4日間必要であり、この復活祭での休暇が培養成功につながったのです。その後も二人の研究は続けられ、ウォーレンとマーシャルはピロリ菌研究の功績により、2005年度のノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
現在、ピロリ菌除菌療法による胃癌予防は外来診療で行われています。
当院はキリスト教信仰を土台とした病院であり、栄光病院の勤務医としてはノーベル賞受賞の裏に上記のようなエピソードがあることは大変興味深いことと感じました。神様が与えて下さった予防法を活用し、予防できる病気は予防し、天寿を全うすることができれば幸いですね。